そもそも,韓流という現象自身が,蓄積性にかかわる現象ではないでしょうか。今でこそ現地放送直後または同時にドラマを見ることを必死で求める人が増えましたが,もとはといえば,われわれ日本の視聴者は,既に放送された定評のあるものが日本でも放送されるのを見させてもらうという順序だったわけですし,その後も,古典ドラマへと遡って堪能したりしてきました。要は,最新のものが順に流れて,古くなれば消えていく,というものではなく,ドラマへの付き合いが既に「ドラマたちの蓄積」との付き合いになってきています。
KBS Japanはまさに,豊富な番組資源を背景にしているのだから,「新しいものを放送しておわり。たまに古いのを発掘して流してまたおわり」ではなく,古いものから新しいものまで大量に蓄積されたアーカイブ(またはデータベース)から検索するのだ,という感覚を持ってくださるとよいなあと思います。もちろん,オンデマンドのインターネット配信はそのようなサービスということになりますが,ただ,基本の考え方が「最新の,または流行のものを,旬のうちに流して後は消す」というものなのであれば,元も子もありません。
専門的な定義では,情報の蓄積というのは,検索のために行なわれる過程です。きちんと情報が集められ,整理された上できちんと保存されていれば,いつでも必要なときに獲得できる,というのが情報検索サービスの基本概念です。このとき,収集・整理(組織化)・保存という一連の過程を蓄積と呼びます。いずれが欠けても,蓄積という名前には不十分です。他方,検索においては,情報源の選択や適切な手順による使用といった技術的要因も重要ですが,最も要となるのは,情報要求(ニーズ)です。要求がなければ検索過程そのものが始まりませんし,検索の成果を評価することもできません。
こうして,きちんと蓄積・組織化された情報から,ニーズに合う情報がその都度引き出されるというのが情報検索であって,それに近いことが,テレビ視聴にも(少なくともスカパーのような限定されたサービスにおいては)求められはじめていると私は思います。